2013年07月17日

【イメージソング】声優さんの一言で大迷惑【フリーの心構え】



いまから10年ほど前の話なので
今現在活動している声優さんの話ではないことを最初にお断りしておく。


当時私はとあるゲームソフトのBGMとイメージソングのプロデュースをしていた。

そのゲームは「萌え絵」をつかった可愛らしい雰囲気のゲームだった。
ちょっと魔法少女的な要素もあったと記憶している。

抱えている作曲家何人かに戦闘シーンとか会話シーンとか
必要とされるBGMを作曲家の得意分野に合わせて割り振ったり
宣伝に使用されるイメージソングを制作したり。
クライアントであるゲーム会社のスタッフや社長さんとPR方法など。
連日ミーティングをしていた。

で、1ヶ月後。

BGMも納品完了。

残すはイメージソングの歌をスタジオでレコーディングするだけになっていた。

歌うのは声優さん。

当時から私は仕事で関わっているだけのスタンスだったので
お名前をきいても別にピンとこなかったし。
どんなキャリアの人なのかも調べなかった。
知りたかったのは声質と歌唱力と、どのキーが一番歌いやすいかとか。
イメージソングを歌う人として興味があるだった。

で、そのイメージソングはゲームのイメージが萌え絵だったので
楽曲の方もポップでカラフルな感じで制作して
ゲーム会社の方へデモソングを聞かせてOKをもらっていた。

そしていざ歌の録音である。

録音自体は私が信頼しているエンジニアのいるスタジオで行ったので1日ですべてが終了した。
スタジオにはゲーム会社のスタッフさんも同席してもらい。
細かい歌いまわしの違いにも意見を求めては完成度を高めていた。

そして無事イメージソングの納品も終わり。

これにてお仕事終了と思っていた矢先に。

そのゲーム会社の社長さんから電話が来た。

お礼の電話かなぁ?なんて思っていると。
これがとんでもない内容だったのだ。

イメージソングを作り直して欲しい。
しかも締め切りは2日後で。

はい??????

なんだなんだと困惑する。

どうにもハギレの悪い言い回しをするその社長さん。
最初は社会人として一定の礼儀を守った話し方をしていた私も
なんだかめんどくさくなってきた。
「あの〜ぶっちゃけどうして急にあの曲がボツになるんですか?」
「事前にデモテープも渡して、それを確認したうえでOKだしたんですよね?」
「いまさらイメージと違うと言われても、対応できないのですが?」
「なにか言いにくい事情があるように感じますが???」

すると社長さんも観念したのか

「いやぁ。あの曲なんですけど○○ちゃん(歌った声優の名前)がイメージと違ったっていうんですよね」
「なんかもっとロックな感じ?激しい曲が良かったみたいで・・・・」




私は数秒間、言葉がなにも出てこなかった・・・。




激しい曲であれば、むしろポップな曲よりも私が得意とするところだし。
抱えている作曲家にもギタリスト上がりが多いから
ギターがガンガンに主張する楽曲を作るのは造作もないこと。
でもそんな曲は今回のゲームの世界観には似合わない。

そのことを社長さんに伝えると

「そうなんですよねぇ。それは私もわかるんですけど・・・でも○○ちゃんが言うには・・・」

この声優さん、過去に私が手がけてきた作品を聞いて
すっかりロックな曲が歌えると思っていたそうで。

しかもこのゲーム会社がアホなことに
こちらが提出していたレーコーディング用のカラオケと歌詞カードを
この声優さんに事前に渡していなかった。

もうアホかと。



私はこの瞬間にこの社長に見切りをつけた。

自分の会社のスタッフが何ヶ月も作業をして完成させた作品と
それに伴う売上。
それよりも声優さんの「もっとロックな曲がよかったな〜〜」という一言を重要視する男。
これはもう先が見えている。

私はあくまでも大人の対応として

すでに納品していること。
新たに作り直すなら、新規に1曲分の制作費をいただくこと。
とうぜん締切が2日後ならかなりの割増料金になること。
そしてそんな短期間ではその声優さんの満足いくほどつくり込めないこと。
これらを伝えてやんわりと断ったのだ。


結局、このゲームはイメージソングを変えることなくリリースされた。
聞いた話ではアキバでそこそこ話題になって続編化の話がでるレベルではヒットしたそうだ。

だが、続編は作られなかった。
なぜか?

このゲーム会社が倒産したからだ。


「ああ、やっぱりねぇ・・・」

倒産したと聞いても別に驚かなかった。

自社の売上や、社員の努力よりも
声優さんの意見に耳を傾ける経営者だもの。


私はイメージソングの一件以来、なにかと理由をつけてはこの会社との取引を断っていたので
倒産されても別に痛くも痒くもなかった。


私はこと「ビジネス的撤退」のタイミングを見定めるスキルには定評がある。

私が手を引けば「あそこの会社はやばいことになるんじゃ?」と周囲が憶測を呼ぶほどで。


このスキルのおかげで今でも業界で生き残っていると言えなくもない。


業種はなんであれ、フリーなり自分で会社を起こすなりする人に覚えておいて欲しい。>「営業力も大事だけど、撤退力も大事だぞ!」と。

なぜかこの撤退力。
どんなビジネス書にも書いていないのだ。

営業力の大切さ、モノを売ることの大切さを力説する本はいくらでもある。
でもこの撤退力を説いた本はお目にかかったことがない。

だが一説によると9割のベンチャー企業は創業から3年以内に倒産するというデータがあるそうな。

100社あって、3年後に残っているのはそのうちの10社しかない。
これ5年後、10年後と考えたらさらに減るだろう。

つまりフリーや起業したばかりの会社が取引できるレベルの中小企業というのは
それぐらい移り変わりが激しいということなのです。

だからフリー志望、起業志望の方は。
取引先を増やすばかりではなくて、取引先を切り捨てる事も頭の中に置いておかなければ
絶対に成功なんてできないということです。

運が良かったというだけで成功する人間も世の中にはたまにいる。
(こういう人に限ってサクセス本を書きたがる)
でもね、
失敗する人間には必ず失敗した理由がある。

そういう意味では失敗のほうが計算が立てやすいのだ。

ならば計算の成り立つ「失敗」こそ自分の意思でコントロールできる方が良い。

失敗を意識してリスクコントロールを怠らずに、長く続ける事ができれば
成功するチャンスにめぐりあう機会もふえるというものだ。



どんな業種であれ、変なクライアントとはいるものなのでね。
フリーなり起業なり考えている人の参考になれば幸い。

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posted by サムライX at 19:27| Comment(7) | 声優関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする